農閑期の過ごし方と研究(ソバージュ栽培)
炎天下の8月。農業を始めた10年前は農閑期だった。
アイメック栽培では越冬長期どりという作型が基本となる。そのため、8月は収穫を終えたトマトの片付けと新たな苗の定植へ向けての準備期間になる。準備期間といえば聞こえはいいが、準備期間の8月から収穫を開始できる11月下旬まで無収入になる。身体を休められて良い部分もあった反面辛い時期でもあった。
辻ファームでは、初期の頃から雇用を入れたこともあり、労働の少ない時期と無収入の期間を減らすため農閑期に栽培できる作物を模索してきた。ビニールハウスで夏越えのアイメック栽培をしてみたり、トウモロコシを栽培してみたり、いろいろやってみたが、休みを返上して夏真っ盛りの炎天下で働く意味を見出せるものはなかった。しかし現在、農閑期がなくなろうとしてる。その答えはこれ。
ソバージュ栽培
ソバージュ(sauvege)とはフランス語で「野生」という意味で、トマトの脇芽を欠かず、自然な樹形で育てることから来ている。脇芽を欠かないため、管理作業が少なく、労働時間が少なくて済む。また、トマトは夏野菜と思われているが、実は高温に弱く、強い日射が当たると焼けてしまうこともあり、ソバージュ栽培(農林水産省パンフレット)ではトマトの茎葉でトマト自身を守れるので、たくさんの資材を必要とせず、1株あたりの収穫量も多いため、とても合理的な栽培方法だ。
2013年度、復興庁・農林水産省から予算を取った研究「ブランド化を促進する果実等(野菜)の生産・加工技術の実証研究」(食料生産地域再生のための先端技術展開事業、岩手県農業研究センター)が一冊のPDFにまとめられたものが無料配布されているので、ご興味のある方は一読をお勧めする。
・「岩手県 露地ミニトマトソバージュ栽培の手引き」(岩手県農業研究センター 技術部 野菜花き研究室著、明治大学 農学部 野菜園芸学研究室監修、2018年1月)
トマトのない時期はどこの農場も重なるもので、常にトマトを出荷できることが辻ファームの強みになっているように感じる。ソバージュ栽培を開始した当初はアイメック栽培のトマトとの品質の差が大きかったが、研究を重ね糖度の差は変わらなくなってきた。
もちろん身体を休めることは大切である。ひとり農業であれば間違いなく栽培をせず休む選択をするだろう。通年出荷体制ができるのは暑いなか働いてくれるスタッフがいるからである。
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