会社員から農家へ転身する場合、農家がどのようなライフスタイルなのかを想像するのは難しい。
農業技術は学校で学べるが、農家のライフスタイルは学びようがないので、全く知らずに就農するのはおすすめしない。この記事は私が農家になれたきっかけとなる「FRESCO農業塾」について紹介したい。
アイメック栽培でフルーツトマトを作りたくて農業をはじめた私だが、研修は横浜で露地栽培で多品目栽培を直売している苅部博之氏に師事した。苅部氏は保土ヶ谷区西谷でFRESCOという人気直売所を経営しており、出会った当時、苅部氏は農業塾という援農や農業体験ではないシステムを模索していた。苅部氏との出会いは運命的であった。おそらくあの時あの瞬間に出会わなければ、農業を始めていなかったといっても過言ではない。
FRESCO農業塾では栽培技術、経営はもとより、農家とはどういうものかを学んだ。今でもだが、農業にとって一番必要なのは栽培技術よりも農家イズム(苅部イズムかもしれないが)が重要だと思っている。
これまで、企業が農業参入をしては撤退していく例を何度も見てきた。その理由は働くことへの考え方の違いにあるように思う。一般的なサラリーマンは休日や就業時間が決められている場合が多い。いわゆる就業規則が優先だ。しかし、農業はというと、天候や作物の状況によっては朝も夜もない。作物優先だ。ちょっとしたことのように感じるかもしれないが、そのちょっとしたことの積み重ねが作物の順調な生育や収穫量の増加に結びついていく。
苅部氏から農業塾に入る前に、「有機無農薬で栽培したいかどうか」を確認された。新規就農でそこを目指すと失敗することが多いからだ。慣行栽培から有機や無農薬の世界に入っていくのは否定しないが、害虫や病気や農薬のことを知らずに最初からその世界に限定するのは危ないという意味だった。
「農薬も技術」とは苅部氏の言葉である。誤解を避けるため書くが、苅部氏は農薬の使用を推奨しているわけではない。市内産の稲藁で自家製堆肥を作り、土壌消毒をせず、農薬なしで栽培している作物もある。それでも野菜が病気などでダメになってしまうなら、躊躇なく必要な対処をする。それがプロの仕事だと私は思う。
そのとき、私は「農業を生業としたいので、農薬の散布方法も含め苅部氏のやり方を教わりたい」と答えたように思う。
出会いを大切に、尊敬できる他人の意見を自分なりに解釈しながら自分の農業に採り入れていく姿勢こそが、現在の辻ファームの基礎となっている。
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