新規就農で有機栽培や無農薬栽培を志す方が少なくない。一般的に認知はされていないが、有機栽培とは、肥料は有機肥料のみ。農薬は農林水産省が認めた有機JASで定められた天然由来のものしか使えない栽培方法である(農林水産省サイト「【有機農業関連情報】トップ~有機農業とは~」)。
日本で有機栽培と自称している方の多くはJAS認証を受けていないと思われ、JASマークの付いていない有機栽培の生産物を買って手に入るものは、どのように作られているかまでは認証されていないため、その農場のルールによる栽培によって生産されたものというのが実態だ。
さて、本題の有機栽培は新規就農者の差別化になるかどうかであるが、結論からいうと、多少差別化にはなるが、デメリットの方が多く全くおすすめしない。新規就農者が最初から有機栽培を始めるということは、RPGゲームに例えると、レベルも低い上にろくに装備を持たずラスボスを倒しに行くことに等しい。それだけ、難しいということだ。
10年農業をしてきてわかったことは、有機栽培は自然環境と植物生理を深く理解し、あらゆる資材の使い方を理解し、使いこなさないと、無謀な挑戦に終わる。実際に辻ファームでも、有機栽培へチャレンジして成功させた例もあるが、たくさんの野菜を販売できずだめにしてきた。特に栽培期間が長いものほど難しい。
もちろん有機栽培のメリットもたくさんあるが、農業が業である限り、新規就農者が生業として結びつきにくい栽培方法は選択肢に入れてはいけない。まず自分自身、一切の化学物質を体内に入れずにこれまで生きて来られたか。極端な例かもしれないが、マラリアを保有する蚊を前に殺虫剤を使わずに立ち向かうか。
これから農業を志す方は、イメージ先行ではなく、いきなり初心者には難しい有機栽培ありきで最初から就農計画を立てるのではなく、農業として継続できるかどうかメリット・デメリットを十分に検討したうえで、まず自分自身が有機栽培によって生産された作物や食品添加物などの化学物質にどのように向き合ってきたか、消費者の目線に立ってみて考えてみてほしい。
そういった検討・経験を重ねたうえで、現在の辻ファームではアイメック栽培によるフルーツトマト生産、露地栽培による一般的に消費される作物生産を中心とした農業形態を選んでいる。
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