まず、農業をはじめるのにイニシャルコスト(初期投資)はどれくらいかかるのか。
これは露地栽培とビニールハウス栽培で大きく異なるが、イニシャルコストについて、「農業は機械が高いからゼロから始めるのは大変だよ」と、どこかで聞いたことはないだろうか。結論からいうと、半分正解で半分間違っている。
そもそも、農業とは作物などを生産販売して対価を得る事業であるが、実際のところ、原価の大部分は人件費(自分の労働)がほとんどである。つまり、事業成功のためにはいかに人件費を削減するかが投資効率を考える上での必要条件となる。
農業機械への投資は人件費を削減するために大きな助けになるので、額面上コストはかかるが、実は人件費の方が圧倒的に高いということを忘れてはならない。例えば、1反の畑(約1000㎡)を鍬だけで耕すとどれくらい大変で、日数を要するか。実際にやってみると機械がどれほど偉大かわかることだろう。農業従事者は耕運機を発明(1854年)したイギリスのファウラーには足を向けて眠れない。
では、機械への投資をどうやって抑えるか。それは、中古を探すか、誰かに借りる必要がある。中古の農業機械はJAに頼むと紹介してくれる場合もあるが、ヤフオクなどのオークションで自分で探すのが主流だ。その点、JAからの紹介の場合、機械のメンテナンスもしてくれるので、よくないものをつかまされることは少ない。
辻ファームではビニールハウスも中古の賃貸、機械も中古ばかりで新品で買ったものはほとんどない。農業機械は家電などよりもずっと長持ちで、中古で充分だ。
また、誰かに借りるという方法も有効だ。機械によっては、年に数回しか使わないものもあり、使用頻度の低いものはできるだけ借りられるなら借りた方がいい。物を所有するということより、保管する場所、メンテナンス費用など考えると、お金を払って借りた方がずっと安いからだ。ただし注意点は、個人間で借りた場合、使用中に機械が壊れたら自分の責任になるリスクがあることも頭に入れておきたい。
中古ビニールハウスを借りる場合は、ビニールの張り替え修理、電気工事、配管工事、機械のメンテナンスなどができるようになっていると、圧倒的にコストを抑えられる。
農業をはじめる前に上記の関連の仕事に就いていると、仕事を外注すべきか、自分でやるべきかの判断がつくため有利になる。辻ファームがアイメック栽培を採用してフルーツトマト栽培をスタートできたのも、それまでの仕事で業者との関わりがあったからというのが大きい。
農業は決して投資効率がよい事業ではないので、自分でできることを増やしておくことをお勧めする。
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